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映画「祈り-幻に長崎を想う刻-」が県内で先行公開 監督の舞台あいさつも

舞台あいさつで映画館を訪れた松村監督

舞台あいさつで映画館を訪れた松村監督

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 戦後の長崎を舞台にした映画「祈り-幻に長崎を想(おも)う刻(とき)-」が8月13日、県内で先行公開され、ユナイテッド・シネマ長崎(長崎市尾上町)で松村克弥監督が舞台あいさつを行った。

舞台あいさつの様子

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 同作は長崎市出身の劇作家・田中千禾夫(ちかお)さんの戯曲「マリアの首」が原作。被爆した長崎の象徴ともいえる浦上天主堂の保存を巡って議会が紛糾する1957(昭和32)年の長崎を舞台に、主人公となる被爆したカトリック信者の女性2人が壊れた被爆マリア像の残骸を安全な場所に移し保存しようとする物語。女優の高島礼子さんと黒谷友香さんがダブル主演を務め、戦争の記憶と傷跡を残すために奔走した人々の姿を描く。

 2020年1月中旬から埼玉県深谷市や茨城県笠間市、千葉県市川市で撮影がスタート。県内でも長崎市にある館内市場や長崎電気軌道浦上車庫で撮影したほか、波佐見町立小学校や川棚町にある旧海軍魚雷発射試験場跡で撮影を行った。

 初回上映は記録的な大雨の中、100人近くの観客が映画館に詰め掛けた。上映後、舞台あいさつに登場した松村監督は「『もはや戦後ではない』という言葉が流行語となり高度経済成長に向かう時代に戦争の記憶をとどめようと社会の片隅にいる人たちが動くことに感銘を受ける。その一方で登場人物がそれぞれに『救いを求める人たち』として、重くなりがちなシリアスなテーマを生き生きと演じてもらうことができた」と話し、「最高のキャストとスタッフが、とてもいいチームワークで作り上げることができた。市民エキストラが天主堂で祈りを捧げるシーンなど本当の信者の方が出演するシーンはリアリティーにあふれ、熱演に俳優陣も感激していたほど」と振り返る。「クライマックスでマリア像が話し出すシーンには被爆直後の浦上天主堂を目にした数少ない『被爆の証言者』でもある美輪明宏さんに出演してもらうことも実現した。できあがってみると長崎がなければ舞台としてもロケ地としても成り立たない作品に仕上がった」と締めくくった。

 10年ほど前から歴史や事実を掘り下げる映画に携わるようになったという松村監督。「新型コロナウイルスの感染拡大を受け映画の公開が1年ほど先延ばしになったことで多くのつながりが生まれた」と言い、今年の平和記念式典には長崎市長からの招待が実現。10月に開催するロサンゼルス映画祭への正式招待も受けていることから、「コロナ禍で実現できるか不透明だが、原爆投下の当事者であるアメリカの人にも見てもらい、どう思うのか生の声を聞いてみたい」と意気込む。訪米が実現できれば作品に登場する写真「焼き場に立つ少年」を撮影した故・ジョー・オダネルさんの妻・坂井貴美子さんにも「一緒に映画を見てほしい」とも。

 写真は2019年11月に来日したローマカトリック教会のフランシスコ・ローマ教皇が「戦争がもたらすもの」との言葉を添えて世界に広めるよう呼び掛けた経緯があることから、カトリック長崎大司教区を通じてバチカン上映に向けた呼び掛けも行っている。

 松村監督は「夏になると戦争の記憶を伝える機運が高まることからこの映画も末永く上映してもらえる作品になれば」と期待を込める。

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