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小菅町で西条祭りや新居浜太鼓祭り模した精霊船 精霊流し前に制作進む

浦津家の精霊船

浦津家の精霊船

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 お盆の「精霊流し」を前に長崎市小菅町の浦津トキ子さんの自宅前では愛媛県の西条祭りや新居浜太鼓祭りの祭礼屋台を模した精霊船作りが進んでいる。

合田さんが手がけた刺繍幕

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 長崎の夏の風物詩にもなっている精霊流しは毎年8月15日に初盆を迎えた故人の霊を船に乗せて浄土へ送り出す伝統行事。大型の精霊船になると7月上旬ごろに本格的な制作が始まり、お盆休みの期間になると家族総出で飾り付けなどを行う光景が各地で見られる。

 浦津さんの精霊船は、新居浜市で神社の祭礼で用いられる屋台の立体刺しゅう幕や飾り房など祭礼用品を制作する合田武史さんが手がけたもの。合田さんは小学生の頃から縫い師を志していたものの、造船が好きだったことから「大学時代だけは好きなことをやらせてほしい」と38年前に長崎総合科学大学・造船学部に進学。造船を学ぶ傍ら家業の呉服店を継ぐことを見据えて和裁教室に通っていた。そこで生徒として学んでいた浦津さんと出会ったことがきっかけで仲を深め、現在でも新居浜太鼓祭りのときには浦津さん一家を自宅に招くなど、家族ぐるみで付き合いが続いているという。

 大学卒業後に実家の合田呉服店に入社した合田さんは祭礼部を設立。1991(平成3)年に納入した西条市氷見の下町だんじりで使われる水引幕を手がけた。以降、県東予地方を中心に大阪、兵庫、岡山、広島、香川などで行われる祭りで使われる飾り幕の制作に携わり、2000(平成12)年に金鱗(新居浜市)を設立。大学時代に知った長崎くんちの「コッコデショ」や新居浜太鼓台に中国文化の影響が色濃く息づいていると感じた合田さん。中国の裁縫の基礎技術の高さに目をつけ、新居浜太鼓台の刺しゅうレベルを残していくために単身中国に渡って技術指導を行いながら、日本の職人と分業して制作を行っている。

 浦津さんの夫・静雄さんの初盆を迎えることから、合田さんが「長年にわたってお世話になった恩返しがしたい」と声をかけたことがきっかけで始まった精霊船作り。船本体は、合田さんが付き合いのある大工で彫刻師に制作を依頼して愛媛県で制作し運び込み、地元の竹材店が制作したみよしの部分を組み合わせた。合田さんが制作した刺しゅう幕は船の両舷に1枚ずつ設置する「阿吽の龍」を金糸で刺しゅう。浦津家の家紋である「沢瀉紋(おもだかもん)」が入った精霊船らしい落ち着いた色目に仕上げた。故人に4人の娘がいることからいることから、「娘らの思いが故人に寄り添って浄土に向かってほしい」と、船の四隅には合田さんの弟の家族が手がけた4つの白い房がつるされている。

 12日に長崎入りした合田さんは、浦津さんの家族らと共に飾り付けの仕上げを行い、精霊流し本番に向けて準備を進めている。

 浦津さんによると、精霊船は17時ごろ自宅を出発し、元船地区にある流し場を目指すという。

※祭りの名称などについて一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします(2022年8月16日14時45分)。

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