ジャズとクラシックが融合した音楽祭「NAGASAKI JAZZ&CLASSIC FESTIVAL(通称=ジャズクラ)」が10月10日~12日、ベネックス長崎ブリックホール(茂里町)を中心に初開催された。

【ベネックス長崎ブリックホールで演奏を披露する辻井さんら】
イベントは、昨年4月にベネックス長崎ブリックホールの指定管理業者を引き継いだ長崎文化振興共同事業体が企画。同団体が公募で「『音楽の力』で長崎の文化的魅力を高める新たな取り組み」として、盛り込んだ自主企画を具現化したもの。
中心となった同施設の藤田敏明館長は「東宝」が開発する施設を中心としたまちづくりに携わり、「博多座」(福岡県福岡市博多区)などの開発をはじめエンターテイメント業界全般に幅広く関わってきた経緯がある。藤田館長は「別府アルゲリッチ音楽祭や宮崎国際音楽祭、霧島国際音楽祭といった九州を代表するクラシック音楽祭のようなイベントを長崎でできないか」と構想を膨らませていた。2021年に「立川ステージガーデン」(東京都立川市)のこけら落とし公演に携わった藤田館長。アーティストの一人として辻井伸行さんを招いた際に辻井さんが所属するエイベックス・クラシックス・インターナショナルの中島浩之社長と出会っていた。
中島社長が長崎出身だったことから同イベントの総合プロデューサーに招き、「長崎くんちで熱くなるこの時期に長崎でジャズやクラシックに触れてもらう機会にしてほしい」と10月の開催を決めた。
今年は、「響鳴」がテーマの同イベント。クラシックやジャズで世界的に活躍する12組のアーティストに協力を呼びかけた。クラシックピアニストの辻井伸行さんとジャズトランペッターの松井秀太郎さんをメインアーティストに迎え、地元アーティスト5組も参加して10日~12日の3日間で12公演(うち有料公演6公演)が決まった。
イベントに先駆け、9日には西町小学校(長崎市西町)で音楽教室「ジャズクラ音楽教室 音楽で遊ぼう」が行われた。イベントにはメインアーティストの辻井さんと松井さん、松井さんとデュオやカルテットで共演を重ねてきたジャズピアニストの壷阪健登さんが登場。辻井さんは映画「千と千尋の神隠し」の劇中で流れる久石譲作曲の「あの夏へ」を、松井さんと壷阪さんは松井さんが幼少期から大切にしているトラのぬいぐるみを題材にした「TIGER MARCH」を披露した。即興で思いついた曲や児童からのお題に応えて即興で作曲した曲を披露したほか、辻井さんと松井さんによるクラシックとジャズのジャンルを超えたセッションとしてチャイコフスキーの「ナポリタンダンス」を演奏すると会場は大いに盛り上がった。

【音楽教室で即興演奏を披露する辻井さん】

【辻井さんと松井さんによるクラシックとジャズのジャンルを超えたセッション】
「幼少の頃から何度も長崎を訪れ、公演も行ってきている大好きな街」と話す辻井さん。イベントに向けて松井さんらと共に「ジャズとクラシックの魅力を伝えられるコンサートになれば」と意気込んだ。

【イベントに向け意気込む辻井さんら】
10日、ベネックス長崎ブリックホール3階ラウンジでは、加々良弦さんら長崎で活動するアーティスト5組が参加するラウンジコンサート「音符たちのモーニングカフェ」が行われ、イベントの開幕を告げた。エントランスホールでは辻井さんと松井さんがジャンルを超えた共演を披露し、観客を魅了したほか、フルート奏者の高木綾子さんのステージも行った。
大ホールでは、「辻井伸行 スペシャル・リサイタル『ラ・カンパネラ』」ではジブリ映画の劇中で流れる久石譲作曲の「あの夏へ」などを披露。びーどろザールでは松井秀太郎カルテットスペシャル・ジャズ・ライブ「FRAGMENTS」が行われた。長崎県美術館(出島町)で行った「高木綾子&ARK QUARTETミュージアム・コンサート」を含め8公演を行った。
11日は、ベネックス長崎ブリックホール1階エントランスでオペラ歌手の田中彩子さんがロビーコンサートを披露。

【田中彩子さんのロビーコンサートの様子】
びーどろザールで松井さんとARK BRASSによる「ブラスの祭典」が、大ホールでは辻井さんと清水和音さん、三浦文彰さん、ARKフィルハーモニックによる「ショパン・スペシャル」の公演を行った。

【ブラスの祭典の公演の様子】

【ショパン・スペシャルコンサートの様子】
12日は長崎大学内にある十八親和ホール・長崎創楽堂(文教町)に舞台を移し、辻井さんと三浦さんによる「プレミアムコンサート」を行った。

【長崎創楽堂で行われたプレミアムコンサートの様子】
イベントを終えた藤田館長は「音楽祭独特の難しさもあったが、中島社長との縁があったことでまずは開催にこぎ着け、アーティストらにもなじんでもらえて良かった」と振り返る。「ジブリ映画の劇中曲など日常の中に使われているクラシック音楽もある。ショパン国際ピアノコンクールのファイナル課題曲にもなっている1番2番などクラシックの中でもポピュラーで親しみやすい曲目を意識したので聞いてもらいやすかったのでは」とも。

【イベントを振り返る藤田館長】
中島社長は「観客とアーティストの一体感が特別な街」と振り返る。まずは5年続けていくことを目標にしていることから、「長崎の人に世界的に活躍するアーティストの演奏に気軽に触れてもらいたい。長崎を訪れたアーティストらが長崎の魅力を伝えてくれるきっかけにもなれば」と継続に意欲を見せる。
公演後、「ジャズとクラシックが融合したような音楽祭への出演は初めてだった。長崎くんちも堪能でき、ステージでもお祭りを意識して手拭いを投げたり、観客と共に盛り上がったりする楽しいステージだった」と振り返る辻井さん。「長崎は人の温かさに触れられる魅力的な街。長崎くんちは長崎の方にとって大切な祭りなので、この時期にフェスができることがうれしい。ジャズクラを長崎くんちのように愛されるイベントにしていきたい」と意気込む。
【公演後の感想を話す辻井さん】