長崎の被爆者「歌の語り部」が海外公演の渡航費支援呼び掛け-戦後70年で

練習中の「ひまわり」。指揮者は寺井さん

練習中の「ひまわり」。指揮者は寺井さん

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 長崎の合唱団「被爆者歌う会『ひまわり』」を支援する市民団体が現在、米国とドイツで予定している海外公演に向けての渡航費支援を呼び掛けている。

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 今年4月から5月にかけて米ニューヨークで開催される核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせて現地で開かれる「核軍縮のためのコンサート」への出演を依頼された同会。現地のNGO団体「ヒバクシャ・ストーリーズ」などが日本国内での同会の活動を知り招へいした。

 5月2日、およそ800人収容のホールで行われるイベント中に開催される同コンサートで、核廃絶を訴える曲「もう二度と」など2曲を披露する予定。10月にはドイツ・ミュンヘン在住のノンフィクション作家・村木眞寿美さんが企画した現地の博物館や教会などでの演奏にも招かれているが、現時点ではメンバーの渡航費が不足しているという。

 2004年に長崎市内在住の音楽家・寺井一通さん(66)の呼び掛けで結成された「ひまわり」。毎週火曜日、長崎駅前にある交通会館(長崎市大黒町)で練習を行っている。寺井さんを除き、メンバー全員が被爆者という世界唯一の合唱団は、「歌の語り部」として核廃絶に向けた活動を続ける。会長は平原ヨシ子さん(86)。現在のメンバーは46人。

 長崎生まれの寺井さんは小学生のころ、当時の人気歌手・橋幸夫さんの「潮来笠(いたこがさ)」(1960年7月発売)を聞いて音楽の世界に目覚めたという。海星高校(東山手町)から上智大学外国語学部フランス語学科へ進学。大学在学中にフランスの音楽「シャンソン」に傾倒した。歌声喫茶「灯(ともしび)」「どん底」などでステージリーダーを務めた後、ソロ歌手としての活動を開始。その後、シャンソンを歌いながらオリジナル曲の創作活動なども手掛けてきた。雲仙普賢岳災害(1990年~)に際しては、被災した大野木場(おおのこば)小学校の子どもたちのためにアルバム「故郷に生きる~頑張れ、大野木場の子どもたち~」を制作。その収益金で2000年春にグランドピアノを贈った。そのほか、長崎を拠点にして音楽を通じたさまざまな取り組みを全国規模で幅広く行っている。

 「ひまわり」は2010年から毎年8月9日の平和祈念式典におけるオリジナル楽曲の合唱をはじめ、長崎県内の学校訪問などや全国各地でのコンサート、市民交流会まで活動の場を広げている。2012年にはメンバーの被爆体験を基にした楽曲CD「わたしがいた夏」をリリース。2013年には沖縄を訪問し、「首里高校」「ひめゆり会館」などでミニコンサートを開いた。

 渡航費支援を呼び掛けるのは「被爆者歌う会『ひまわり』を支援する市民の会」(稲沢陽三会長)。これまでも個人的に「ひまわり」の活動を支援してきた稲沢さんは「ぜひ一緒に支えてほしい」と呼び掛ける。協力者には被爆70周年事業終了後、活動報告書を作成して報告するという。

 「ひまわり」の平原会長は「今年は被爆から70年を迎える。核のない時代、世界を求めてさまざまな場所で訴えてきたが、その思いや声は国内のみならず世界に向けてこそ発信すべきだと考えてきた。ローマ教皇からは『ひまわりに神のご加護と祝福を』というメッセージもいただいた。核の非人道性を実体験してきた私たちだからこそ伝えられるものがあると確信している」と力を込める。現在、メンバーの平均年齢は77歳に達する。「私たちにとってこれが最初で最後のチャンスだと思う。今後も反核・平和の歌を歌い続けていく覚悟なので、どうかよろしくお願いいたします」と呼び掛ける。

 問い合わせは「ひまわり」事務局(野元さん、TEL 090-9608-0581)まで。

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