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長崎の幼稚園で「すもう大会」-320年の伝統の土俵で

エキシビションマッチは寄り切って「おとぎのつき(女児)」の勝ち

エキシビションマッチは寄り切って「おとぎのつき(女児)」の勝ち

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 長崎・淵神社(長崎市淵町)境内にある宝珠幼稚園の園児ら7人による「すもう大会」が10月30日、行われた。

ハリボテ力士にぶつかる年少組の「かずまふじ」

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 同神社は「長崎相撲」発祥の地。1693(元禄6)年6月、長崎奉行が勧進元(興行の主催者)となり同神社(当時は肥前稲佐弁天)で弁財天建立勧進相撲が行われた。長崎市史によると、伏見(現・京都市)や堺(現・大阪府堺市)、豊後(現・大分県)、肥後(現・熊本県)から総勢50人ほどの力士が集まり、7日間の取り組みは大入り満員だったと記録されている。その後も同神社での相撲は秋の伝統行事としてますます盛んになり、神社の祭礼と相撲をセットにして「弁天くんち」(後に稲佐くんち)と称したという。

 戦後は三菱三場所相撲、長崎市長杯子ども相撲、わんぱく相撲、長崎県民体育大会成人相撲など多くの大会の土俵として利用されている。今月27日には35回目を迎える「高校選抜相撲淵神社大会」が行われ、熊本農業(熊本県)、多久高校(佐賀県)の県外勢と長崎鶴洋、北松農業、諫早農業の長崎県勢を合わせた5校が対戦したばかり。

 11時。準備体操を十分に行った園児らは「まわし」に着替えて準備。園児総数8人だが、1人欠席のため7人で対戦。園児には一人一人に「しこ名」が与えられた。

 初戦は年少組対決。長崎市相撲連盟の野中雅之さんが「東、かずまふじ。西、あきのうみ」と呼び出すと、唯一の年少組「かずまふじ」とハリボテ力士の「あきのうみ」が土俵に登場。「かずまふじ」は清めの塩を小さな手に握り締め、対戦相手に向かって力いっぱい投げつけては戦意をあらわに。正面からぶつかった「かずまふじ」に対し、「あきのうみ」は土俵際で懸命に堪えながらも一時は猛烈な反撃に転じたが、最後は寄りきりで「かずまふじ」に軍配が上った。

 年中組対決では「かいりゅう」が男児の意地を見せ、女児の「あすかやま」をねじ伏せた。女児4人がしのぎを削る年長組リーグ戦では、圧倒的な存在感を見せる「まひろのほし」が全勝優勝。続いて2勝1敗の「まなのはな」以下、「おとぎのつき」「あこかぜ」と並んだ。

 最終戦はエキシビションマッチ(非公式試合)が組まれ、年長組3位の「おとぎのつき」と年中組優勝の「かいりゅう」が対戦。両者譲らぬ土俵際の激しい攻防戦となったが、「おとぎのつき」が女児ながら年長者の意地を見せ、土俵際で懸命に踏ん張る男児「かいりゅう」を豪快に寄り切って雌雄を決した。

 会場はビデオカメラを持つ保護者らの応援の声に終始包まれ、表彰式では各組の優勝者に賞状と保護者手作りの「化粧まわし」が渡された。園児全員の首には下條園長から一人一人に手作りの金メダルが掛けられた。下條園長は「昔の人は『長崎くんちに竹ん芸、淵の相撲で秋が来る』とうたった。幼稚園児といえども、320年の歴史を持つ土俵に登った子どもたちの心に大きなものがきっと残るはず」と子どもたちの将来に期待を寄せた。

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