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長崎のチェロ奏者が「1000チェロ・仙台」に参加

長崎駅を出発する片田尚孝さん

長崎駅を出発する片田尚孝さん

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 長崎市在住の介護福祉士でチェロ奏者の片田尚孝さんが5月20日、宮城県仙台市で5月24日に開催される「1000人のチェロコンサート(通称=1000チェロ)」で演奏するためJR長崎駅を出発した。

福岡で行われた分奏会の様子

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 片田さんが被災地を訪れるのは2回目。前回は震災後まもない2011年4月4日、医療支援ボランティアとして赴き、宮城県多賀城市の避難所で被災者に足浴などの世話をした。3日間の避難所通いが終わって長崎に帰る前日の4月7日深夜、震度6強の大きな余震が直撃。床に座って医師や薬剤師らとくつろいでいたところを、「まるでジェットコースターに乗っているような」激しい横揺れに襲われたという。

 揺れが収まってから外に出た途端、潮の匂いが充満していることに気付いた。明らかに潮位が上昇している恐怖を肌で感じた片田さんは、津波こそ襲ってこなかったが長崎に帰ってからもメンタル面で大きなダメージが長く残ったという。

 2013年10月、チェロ仲間のつてでチェロ奏者でもある東北大学の高橋明教授と知り合った片田さん。長崎でも被災者のためのチェロ演奏を広めたいという高橋教授の趣旨に賛同し、今まで4つの公演を手伝ったという。「高橋先生には仙台で行われる1000人のチェロコンサート(1000チェロ)の出演メンバーを探すというミッションもあった。話を聞くうちに被災地に行った時のことを思い出した。落ち着いて受け止められるようになり、私も出演することになった」と振り返る。

 チェロだけの大規模なコンサートが開かれるようになったのは、独・ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のチェロ奏者・ルドルフ・ワインスハイマーさんが1972年に「ベルリンフィル12人のチェリスト」というチェロアンサンブルを創設したのがきっかけ。同団体はプロ演奏家の集まりだったが、20年後の1992年に「チェリストが100人くらい集まってコンサートをしよう」とワインスハイマーさんが地元の区長に提案。予定を上回り、ドイツ国内にいるアマチュアのチェロ奏者341人が集まった。1992年7月14日に開かれた演奏会は、史上初のチェリストだけの大規模コンサートとしてギネスブック世界記録に登録された。

 日本では1998年11月29日、神戸ワールド記念ホール(兵庫県神戸市)を会場に阪神・淡路大震災復興チャリティーとして1013人のチェロ奏者が参加し、初めて「1000チェロ」が開催された。その後、同じ会場で2001年7月(奏者715人)と2005年5月(同1069人)に開催。2010年5月の第4回は広島グリーンアリーナ(広島市)で開催(823人)された。今回の仙台市で5回目の開催となる。

 今年1月4日、片田さんは福岡で行われた分奏会に参加。「数十人のチェロアンサンブルでも音楽としてまとめるのは、なかなか難しい。しかも本番の奏者の数は4桁。どんな響きになるのか想像がつかない。ただただ、悔いが残らないように練習するだけ」と話す片田さん。「ボランティア最終日の夜、3人で食べようとした『ずんだ餅』が余震騒動で食べられなかった。あの店にもう一度立ち寄ってみたい。被災者の人たちが、どう生きようとしているのか。その姿に触れてみたい」とも。

 演奏曲目は「鳥の歌(コンサートマスター独奏)」「アヴェヴェルムコルブス」「賛歌」「あすという日が」「千の風になって」「チェロのためのレクイエム」「東北から世界へ(メドレー)」などが予定されている。

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