長崎で40年間病床の女性が詩のCDブックを発売-多数のアーティストが参加

CDブック「きくちゃんの詩(うた)」。左は6月21日の発売記念ライブのチラシ

CDブック「きくちゃんの詩(うた)」。左は6月21日の発売記念ライブのチラシ

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 長崎市内の病院で長年病床に伏す女性が作った詩「きくちゃんの詩(うた)」が著名なアーティストやミュージシャンの協力でCDブック化され、6月20日に発売された。

ライブで「愛の中で生きているよ」を歌う長崎少年少女合唱団の子どもたち

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 女性は詩人の平田喜久代さん。脳性まひで言語障がいと四肢にまひを持ち、長崎市内の病院で40年間入院生活を続けている。2003年に気管切開して以来、人工呼吸器でかすかに声が出せる状態だが、妹の山口まゆみさんが介護をしながら詩作を続けており、2012年8月に詩集「きくちゃんの詩」を出版。詩集は昨年4月に女優の大地真央さんがテレビ番組で朗読するなど全国的に大きな反響を呼んだ。山口さんは幼いころに姉の看護をしようと決意し、看護師の道に進んだという。

 2011年1月に平田さんが特別支援学校に入学し、50代で生まれて初めて小学生になったことが詩集を出版するきっかけになる。当時担任だった大原万里亜さんの勧めで詩作を始めた。大原さんはその後、教員を辞して布ナプキン専門店「りぼん」(長崎市古川町)を開店。現在も平田さんとの交流は続いている。

 詩集が完成した時、大原さんが「きくちゃん、次の夢はなに?」と尋ねたところ、平田さんは「先生、私、CDば作りたかと」と満面の笑みで答えたという。平田さんの夢をいつか叶えたいと考えていた大原さんは、知り合った音楽家や芸術家に「ダメもと」で呼び掛けたところ、多くの協力者が集まりCD化が実現した。

 その一人、高浪慶太郎さんは長崎市在住の音楽家で80年代に一世を風靡した渋谷系バンド「ピチカート・ファイブ」の元メンバー。阿野裕行さんは長崎市内で音楽教室を開いている。市内在住の音楽家・田中絵里さんも協力している。その後、今年3月に終了した人気番組「笑っていいとも」のテーマ曲の作曲で知られる音楽家の伊藤銀次さんもギター演奏で参加。伊藤さんは今年2月に平田さんを訪ね、自身の歌を披露している。表紙のイラストは全日空の機内誌「翼の王国」などにイラストを提供している画家・イラストレーターの早乙女道春さんが担当。今年1月に来崎し、高浪さんが平田さんに楽曲を披露している様子などをライブドローイング(動きがある対象をその場で生き生きと模写する手法)して作画した。「ペコロスの母に会いに行く」の作者で漫画家の岡野雄一さんも平田さんを訪問。「きくちゃんの前向きな姿勢を感じて、逆にハゲまされた」と作品にコメントを寄せている。

 CDブックはA5サイズ、18ページ。「虹」「キラキラ」「さくら」「お母さん」「たんぽぽ」「秋の昼さがり」「ことば」「神様のごほうび」「出会い」「今度生まれて来る時は…」「愛の中で生きているよ」「もったいないぞー」の12編の詩を収録。このうち3編には曲を付けて歌として収められている。

 その一つ、「キラキラ」の作曲は田中さんが担当。歌は日見幼稚園の園児が合唱している。次の「秋の昼さがり」は高浪さんが作曲し、自身で歌唱。伊藤銀次さんのギター演奏は同曲の中に収録されている。3曲目の「愛の中で生きているよ」は阿野さんが作曲。長崎少年少女合唱団が歌っている。発売翌日の6月21日、オハナカフェ(浜町)でCD発売記念ライブが開かれ、会場は立ち見も出るほどの満席。収録された詩の朗読や、CDができるまでのエピソードなどが映像を交えて披露され、高浪さんをはじめ、日見幼稚園の園児や長崎少年少女合唱団が参加して歌も披露された。

 参加できなかった伊藤さんは会場に寄せたメッセージの中で「僕が初めてきくちゃんの詩を見たとき、その生き生きとした言葉が僕の心を激しく揺さぶって瞬く間にいくつものメロディーが浮かんだ」と告白。いつか曲として完成させ、世の中に発表すると約束した。「純でいちずな思いさえあれば、そこに必ず世界はできていく。きくちゃん、願いごとってかなうんだね。おめでとう」と結んだ。

 価格は1,620円。長崎市内の書店や、「りぼん」などで販売する。

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