長崎市民会館で「わたぼうしコンサート」 大賞は「たっせいかん」

トロフィーを持つ原口美和さん(左)と作曲した平石和之さん

トロフィーを持つ原口美和さん(左)と作曲した平石和之さん

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 長崎市民会館(長崎市魚の町)文化ホールで8月11日、障がいを持つ人が作った詩に曲を付けて歌う「わたぼうしコンサート」が開かれた。

フィナーレの風景

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 1973(昭和48)年、障がいを持つ子どもたちが特別支援学校卒業後も生きがいを感じながら生活できる「自立のための家」を作る目的で「奈良たんぽぽの会」が発足。1975(昭和50)年4月、特別支援学校の生徒たちが書いた詩に感動した音楽好きの若者たちが曲を付け、初の「わたぼうしコンサート」が奈良で開催された。コンサートは全国的な反響を呼んだため、翌年9月に「全国わたぼうし音楽祭」へと発展。1991年から「アジア太平洋わたぼうし音楽祭」として2年ごとにアジア・太平洋の各地で開催されている。

 イベント名の「わたぼうし」とは、タンポポの種に付いている綿毛のこと。風に乗って飛ぶタンポポの種のように、活動が人から人へ広がって各地で花開くことを願って名付けられた。

 1978(昭和53)年、長崎で市民活動をしていた青年が東京で「わたぼうしコンサート」を知り、仲間に呼び掛けて長崎市公会堂で初めてのコンサートを開催。1980(昭和55)年には中国上海市盲童学校を招いて「ニーハオコンサート」を、国際障がい者年(1981年)には「世界わたぼうし音楽祭」を開いて大きな反響を得るが、1985(昭和60)年の第8回で一度幕を閉じた。11年後の1996年、前年に発生した阪神淡路大震災後にボランティア活動への関心が高まった社会背景もあり、元実行委員が呼び掛けて再開された。今回は通算29回、再開後21回目のコンサートになる。

 今年1月中旬から3月末まで詩を募集。応募作品202編を実行委員会で30編まで絞り込んだ後は県や市、支援団体のメンバーで構成される選考委員会が入選作8編を選び、残り22編には奨励賞が贈られる。コンサート本番では入選した8編それぞれの作詩者、作曲者が登壇して実際に演奏を披露。審査員の選考によって全員に各賞が与えられ、その中から「わたぼうし大賞」が発表される。

 幕が上がると、子どもの成長育成ネットワーク「ながさkids」(長崎市つつじが丘)と「ときわ学童クラブ・ジャンボ!ドラムサークル」(大村市)の子どもたちがオープニング曲「絆」を合唱。昨年の大賞受賞者・下田一聖さんからトロフィーが返還された。

 第1部で演奏された入選作品8編は以下の通り(出演順)。

 「わたしの ゆめのうた」(国際ソロプチミスト長崎会長賞)作詩=酒井優和さん(6)、作曲=松井哉さん(48)。「キッチン えぷろん」(長崎県社会福祉協議会会長賞)作詩=隈部大樹さん(22)、作曲=野崎和俊さん(66)。「水道の蛇口をひねるみたいに」(長崎市長賞)作詩=田中美和さん(40)、作曲=古本由美子さん(46)。「僕を産んでくれてありがとう」(わたぼうしコンサート審査委員会賞)作詩=福田隆次さん(32)、作曲=平石和之さん(53)。「アサヨとタツ」(長崎県知事賞)作詩=中村達史さん(48)、作曲=浜口博一さん(57)。「心の中の自分」(長崎県教育長賞)作詩=森鉄男さん(57)、作曲=松原広実さん(58)。「幸せ」(長崎県地域婦人団体連絡協議会会長賞)作詩=安部恵子さん(57)、作曲=笹田純冬さん(17)。「たっせいかん」(長崎あじさいライオンズクラブ会長賞)作詩=原口美和さん(41)、作曲=平石和之さん(53)。

 第2部では「ながさkids」の子どもたちによる手話うた「サンシャイン」のゲストパフォーマンスや、わたぼうし音楽祭の代表曲「願いをこめて」「夢」「小さな一歩」「大切な君へ」「ラブ マイ タウン」が披露された。

 審査の結果、わたぼうし大賞には原口美和さんが作詩した「たっせいかん」が選ばれた。原口さんが職場に通う喜びを心から表現した作品で、仕事を通じて自身の成長を感じることや「ひらがな」で感謝する言葉が並ぶ。受賞インタビューで原口さんは、「やっと一人の人間として認めてもらえたことがうれしかった。私が大賞なんて夢みたい」とトロフィーを手にしながらほほ笑んだ。ギターを持ってもう一度マイクの前に立った作曲者の平石和之さんは、「本当に私をここまで変わらせてくれてありがとう。感謝の気持ちでいっぱいです。みんな、ありがとう」と再び受賞曲を歌い上げた。

 フィナーレは同コンサートのテーマ曲「わたぼうし」を全員で合唱。観客の頭上には「わたぼうし」が舞い、フンワリフワフワとサビが何度も繰り返された後、大きな拍手に包まれて幕を閉じた。実行委員会の吉田光浩事務局長は「来年は通算30回目を迎えるが、知らない人もまだ多い。ぜひ一度会場に見にきてほしい」と呼び掛けた。

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