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長崎・淵神社が「被爆樹木」の情報提供呼び掛け 筑波大教授らが調査協力

淵神社の被爆クスノキ。左側(爆心地方向)に傾いているという

淵神社の被爆クスノキ。左側(爆心地方向)に傾いているという

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 淵神社(長崎市淵町)が現在、鈴木雅和教授らが行っている「被爆樹木」調査への情報提供を呼び掛けている。

広島市の「被爆樹木プレート」の例

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 調査を行っているのは筑波大学の鈴木雅和教授(環境デザイン学、農学博士)と、同大大学院生の大脇なぎささん、同大学研究員の王尾和寿さんの3人。

 鈴木教授らが2013年9月、広島市内でクスノキ、イチョウなど「1本の幹から成長した樹木」56本のうち、地上部が原爆で焼失した樹木や被爆後に移植された樹木を除く29本を分析した結果、79%に当たる23本が爆心地方向に傾斜していることが分かった。広島市は現在、55カ所およそ170本を「被爆樹木」として認定している。鈴木教授らは同年、国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所が広島平和記念資料館(広島市中区)で開催した公開セッションで調査結果を発表した。

 広島市では爆心地から約2キロ圏内で被爆した「被爆樹木」を1996年度から調査。証言や樹木医による確認などを基に、一般人が立ち入れない個人宅にある場合などを除いて登録する制度を設け、それぞれの樹木に被爆樹木であることを示す標識を設置している。また「被爆樹木マップ」を作成し、それぞれの樹木に付けられたQRコードをスマートフォンなどで読み取ると、その樹木の詳しい情報を読むことができる。

 9月10日、鈴木教授らは被爆樹木調査のため、爆心地から約1.7キロの場所にある淵神社を訪れ、同神社宮司の下條一仁さんに被爆当時から伝わる証言などを求めた。鈴木教授が同神社境内にあるクスノキを調査したところ、「幹の近くに立つだけで爆心地の方向が分かり、被爆した表皮と成長を続ける裏側との違いがはっきり目視できる。人為的な力が加わっていない健全な被爆樹木と言える」ことが判明。調査の重要性を知った下條さんは、鈴木教授らの情報収集に協力することを申し出た。

 「人も小さな生き物も全てが失われた長崎で、当時から静かに立ち続ける被爆樹木には生き続ける世界遺産として発信するだけの価値がある」と下條さん。調査対象は爆心地から2キロ圏内に生息する樹木で、すでに神社関係者への問い合わせを始めている。

 下條さんは「明らかに被爆当時から生息し、現在も樹勢があるものを探している。情報をお持ちの方は、ぜひ協力してほしい」と呼び掛ける。

 情報は同神社(TEL 095-861-0836)まで。受付時間は平日9時~17時。

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