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長崎で東大ROCKETプロジェクトの中邑賢龍教授講演会

2階席までほぼ満席となった会場。檀上であいさつする白石直子さん

2階席までほぼ満席となった会場。檀上であいさつする白石直子さん

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 長崎ブリックホール国際会議場(長崎市茂里町)で10月12日、東京大学「異才発掘プロジェクト・ROCKET」中邑賢龍教授の講演会が開かれ、500人を超える参加者でほぼ満席となった。

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 「夢を実現できる・学びの環境のつくり方」と題する同講演会は、勉強が大嫌いな子ども専門の学習塾「凸凹楽習塾・勉強ラボ」(長崎市虹ケ丘町、TEL 095-894-5380)の白石直子塾長が呼び掛けて今年6月に結成された団体「みんな天才ちゃんプロジェクト(略称=みん天)」が主催した。

 今年5月、福岡で行われた中邑教授の講演会に参加した白石さんは、中邑教授が唱(とな)える説を聞いて「これこそ自分が求めていたもの」と感激。中邑教授に「長崎に来てください」と直談判したところ快諾を得た。3連休の最終日に当たる10月12日に同会場を予約することができた白石さんは、一夜明けて「講演会なんて一度もやったことがない」ことに気づいた。友人らに助けを求めたところ「素晴らしいことだから、みんなで協力しよう」と賛同者が集まり、「ROCKET発射準備・長崎実行委員会(仮称)」を結成。その後「みん天」として再スタートした。

 講演会の冒頭、実行委員長の白石さんがあいさつ。これまでの経緯と関係者への謝辞を述べた。大きな拍手に迎えられて登壇した中邑教授は、「うちの研究室の人たちはコントロール不能」と話し、「一般社会では非常識」と受け取られる行動を当たり前のように行う人たちが集まる環境であることを紹介。軽快な語り口で聴講者に語りかけながら、スライドを駆使して講演を進めた。中には大きくうなずきながらメモを取る聴講者の姿も。

 「障がいにこだわらない」というテーマを投げ掛けた中邑教授は、事例として「学校の連絡帳」を取り上げた。「連絡帳の目的は連絡事項を伝達することのはず。どうしても書くことが苦手な子どもに、書くことを強いる必要はない。ICレコーダーを使えばいい」と単刀直入に解決法を示した。

 極度の緊張で電話連絡できず、無断欠勤して会社を解雇された人の事例を掲げ、「今日は会社休みますと上司にラインやメールができる人」と聴講者に質問した中邑教授。ほとんどの人が手を上げない状況を見て「どうしてできないのか?実は単なる思い込みでしかない」と、一般の人の心理状況を分かりやすく解説した。

 「人間はすでにサイボーグ化している。記憶は脳ではなくクラウドや外部記憶装置に収まっている。その証拠に、昔は誰でも普通に電話番号を暗記していた。今ではほとんどの人が家族の携帯番号さえ暗記していない。携帯電話のメモリーを見なければ分からない」と説明。「ハイブリディアン(自分自身と外部装置を使いこなす人)の時代になり、記憶の外在化が急速に進んでいる」と話した。

 講演後は白石さんが事前に集めた質問コーナー「もっと教えて中邑先生」を開催。「理解力はあるが読み書きが苦手なわが子は、学校の点数に結びつかない。どう導いたらいいか」という質問に対して中邑教授は「読み書き計算はツールで補えばいい」とアドバイス。「親が先回りしてはいけない。子どもが自分の意思でツールを使いたいと思わなければ意味がない。家で使っていないものは、学校でも使えない」とも。

 「好きなことは、努力していない。好きなことが才能に結び付く。そのような異才を持つ子どもたちを周囲の大人がつぶさない社会の実現が不可欠」と締めくくった。

 長崎市内在住の女性聴講者は「とてもユニークな考えで目からうろこが落ちた。今後、身の回りでも考え方を改めていきたい」と話した。

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