長崎の老舗貸本店が一日限定で復活-吟遊詩人ライブや写真展も

吟遊詩人のRueさん(手前中央)と本村公一さん(奥)

吟遊詩人のRueさん(手前中央)と本村公一さん(奥)

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 長崎市内で長年にわたり子どもたちに愛され、2010年に休業した「本村貸本店」(長崎市日の出町)が9月20日、一日限定で復活する。主催は本村公一さん(38)

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 同店は2012年5月13日に94歳で他界した本村満子さんが病床に伏して2010年に休業するまで約37年間、切り盛りしてきた。イベントを主催する公一さんは満子さんの孫に当たる。限定オープンイベントは今回で2回目。第1回イベントは満子さんが亡くなった年の初盆に合わせ、8月14日・15日の2日間にわたって開かれた。

 満子さんは若いころ佐世保に住んでおり、海軍基地にいた本村寅雄さんと知り合い結婚。海軍少尉だった夫の寅雄さんは広島県呉市にある潜水艦学校で教官を務めたこともある。一家は野母崎に住んでいたが、戦後はタンカーの乗組員として活躍した寅雄さんが定年退職を迎えたことを機に日の出町方面に引っ越した。

 子ども好きで専業主婦だった満子さんは経営の経験は全くなかったが、貸本店を開くためにさまざまなことを学び1973(昭和48)年に開業。貸本だけではなく駄菓子の販売も行っていたため、近隣の子どもたちを中心に「本村貸本のおばちゃん」として地域に愛されてきた。店の前の道路はバイクくらいしか通行できないほど狭い。かつては大浦北小学校(2007年廃校)の通学路だった。

 イベントを企画した公一さんは東京の商社に2年間勤務した後、政府開発援助(ODA)関連企業に転職。南アフリカ、フィリピン、ラオスなどを中心に活躍してきた。現在はラオスの日系企業で働いている。

 「今回、時期はずれの夏休みで帰国したタイミングに合わせて開く。自分が日本にいないので、定期的な換気などのメンテナンスを続けてくれる両親に心から感謝している」と公一さん。父の秀規さん(70)と母の佐知子さん(65)は、自宅がある諫早市多良見町から定期的にメンテナンスに訪れている。休業後、シロアリ駆除や大量の傷んだ蔵書の処分など、日本にいない公一さんに代わって秀規さん夫妻が建物を守ってきた。

 「建物は維持費がかかるし、解体しようかという話が何度もあった。長男がどうしても残してほしいというので協力しているが、私にとっても母が輝いていた場所に皆さんがよろこんで来てくださるのは本当にうれしい」と目を細める。公一さんは「祖母は本来、かなり人見知りだったらしい。店を始めてから子どもたちの相談に乗ることも多かったと聞いている。近くにある活水女子大の学生さんもよく通ったらしい。商売としては成り立たなかったかもしれないが、多くの人たちに安らぎを与えてきた祖母の形見をこれからも残していければ」とほほ笑む。

 店内にはコミック本がぎっしりと詰まった棚が並ぶ。「以前、7000冊くらいあると聞いたことがある。かなり処分してしまったが、それでもまだ数千冊は残っている。前回開いた時は古いコミックを見つけて懐かしいと興奮する大人もいた。先着60人ほどだが、ラオスから持ってきた甘いコーヒーもふるまう。ぜひ立ち寄ってほしい」と呼び掛ける公一さん。

 開催時間は9時~18時。入場無料。本は店内での閲覧のみで実際の貸し出しは行わない。自動車で来場する場合は近くのコインパーキングを利用できる。

 11時からは吟遊詩人「Rue(ルー)」さんのライブや長崎交響楽団のチェロ奏者・片田尚孝さんの演奏も予定する。屋外では写真家・前田茜さんのミニ写真展も開く予定。

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