長崎で市民ミュージカル「赤い花の記憶 天主堂物語」 全編オーケストラ生演奏

リハーサル中の小泉さん。(右から2人目。大きく手を上げる女性)

リハーサル中の小泉さん。(右から2人目。大きく手を上げる女性)

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 長崎ブリックホール(長崎市茂里町)大ホールで8月11日、旧大浦天主堂(南山手町)の建設を巡る人びとの対立や交流を描く市民ミュージカル「赤い花の記憶 天主堂物語」が上演される。

フィナーレ

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 1865年に建立された同教会は、現存するキリスト教関連建築物としては日本最古のもので、正式名称は日本二十六聖殉教者堂。名称の通り、日本二十六聖人(西坂町)に捧げられた教会であり、殉教地の西坂に向けて建てられている。1953(昭和28)年、国宝指定。観光客の増加により信者の礼拝に支障が出てきたため1975(昭和50)年、隣接地に信者のためのカトリック大浦教会が新築された。

 同公演は1865年の「信徒発見」から150年を経た今年、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」世界遺産登録を支援するために企画され、出演者は一般市民から公募した。

 「信徒発見」とは禁教令が存在していた1865年3月17日、旧浦上村に潜伏していたキリシタンが大浦天主堂を訪ね、プチジャン神父に信仰者であることを密かに名乗った事件。その後、プチジャン神父は浦上や五島などを密かに訪ねて信者の発見に努め、浦上だけでなく長崎の各地で多くの潜伏キリシタンが信仰を守り続けていることが分かった。このニュースは当時の教皇・ピオ9世にも知らされ、教皇は「東洋の奇蹟」と呼んで感激したという。

 物語は1863年、フランス人神父・プチジャンが長崎に赴任するところから始まる。当時、「フランス寺」と呼ばれた木造建築物・旧大浦天主堂の建設を巡り、プチジャン神父と天草出身の大工棟梁・小山秀之進との対立や交流を軸に描く。大工の娘と弟子との恋物語や、島原の乱、二十六聖人の受難、信徒発見、浦上四番崩れなど、日本のキリスト教史450年の史実と、演出されたさまざまなエピソードが交錯しながら物語が展開する。

 主なキャストはプチジャン神父のほか、小山棟梁、さくら(小山の娘)、三次(小山の弟子)、マリア(イギリス人の娘)、ザビエル、天草四郎、天正4少年、二十六聖人など。昨年、同作と縁が深い大村市、南島原市、天草市で上演され、いずれも大きな評価を得た。

 音楽は長崎県内唯一のプロオーケストラ「OMURA室内合奏団」が現場で生演奏し、「ザビエルからの手紙」「イエス、マリア」「かすていらに夢中」「信徒発見」「赤い花」などのオリジナル26曲が物語を盛り上げる。

 オーディションで選ばれた長崎市内在住の小泉容子さんの役どころは、佐賀藩深堀領(現在の長崎市深堀町)出身の娘「おけい」。一家は深堀武士で、信仰を守るため浦上村に潜伏し農民に扮(ふん)するという設定。慣れない農業では結局食べていけず、おけいは街に奉公に出かける。

 「本当は信徒役がやりたかったが、実際の先祖も深堀騒動(1701年に長崎会所役人と深堀武士がささいなことから多数の死傷者を出した事件)の後、浦上に移住してきた潜伏キリシタン」と力を込める小泉さん。父方の高祖母(祖父母の祖母)「クララこの」さんは、浦上四番崩れ(長崎のキリシタン弾圧事件)で流刑になる。しかし、夫の熊五郎さんは信仰を捨てて弾圧を免れた。クララさんが流刑を解かれた後も、復縁することはなかったという。

 「人生はいろいろある。今となっては2人の本当の気持ちは分からないが、ひいひいおじいちゃんが棄教しなかったら多分、今の私はいなかった。『あいつは最後まで信仰守ったのに、俺って卑怯だな』と、すごく後悔しながら残りの人生を生きたかもしれない。この役を通じて『いいよ、いいよ。OKだよ』と、ひいひいおじいちゃんに言ってあげたい。私の名前『YOKO』の真ん中はOKだし、役名も同じだから」とほほ笑む。

 14時開演と18時30分開演の2回公演。入場料は一般=2,000円、小中高生=1,000円、親子券=2,500円(当日券は各500円加算)。「浜屋プレイガイド」「絃洋会楽器」「くさの書店西友道ノ尾店」「長崎ブリックホールチケットカウンター」「シーハットおおむら」で取り扱う。

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