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長崎・香焼町に譲渡型保護猫シェルター 愛護団体がCFで得た資金で開設

「長崎さくら猫の会」代表の山野順子さん

「長崎さくら猫の会」代表の山野順子さん

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 老猫ホームとキャットホテルを併設する譲渡型保護猫シェルター「咲く猫 Plus(プラス)」(長崎市香焼町)が2月22日、開設された。運営は長崎さくら猫の会(魚の町)。

シェルターで保護されている若い猫

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 同会代表の山野順子さんは2017(平成29)年夏、捨てられていた4匹の子猫を救うことができなかったことがきっかけで猫の愛護活動を始めた。2018(平成30)年、任意団体「長崎さくら猫の会」を立ち上げ、不妊去勢後に元の場所に戻し、餌やりやふん尿の清掃を行いながら地域猫として管理する「TNRM」活動をスタート。昨年3月には一般社団法人化し、行政とも協働して飼い主がいない猫の問題に取り組み、依頼を受けて他の地域のTNRや保護して去勢後に人に慣らした上で譲渡する「TNTA」活動にも取り組んでいる。

 路上で倒れている傷病猫の相談や子猫の保護依頼が後を絶たない一方、同会ではシェルターがなく、活動資金の多くを寄付で賄うことから限界を感じていたという山野さん。地域猫の世話をしてきた人たちも高齢化が進んでいることから、「行き場を失う長崎の猫を助けたい」と老猫ホームとキャットホテルを併設する譲渡型保護猫シェルターの開設を目指して昨年4月、クラウドファンディングで支援を呼びかけた。

 クラウドファンディングでは317人から640万円を超える支援が寄せられ、昨年夏ごろから物件探しと並行して許認可の取得など開設に向けた準備を進めた。「うれしさと、本当に感謝しかない」と話す山野さん。香焼町の港町の一角にある古民家を改装し、1階に保護猫シェルター、2階にキャットホテルと老猫ホームを構える施設は「猫の日」の2月22日に開所を迎えた。

 老猫ホームには昨年亡くなった保護猫活動家が最期まで面倒を見ていたという10歳~15歳の3匹の猫が入所。日当たりのいい暖かい部屋でゆったりと過ごしている。保護猫シェルターには山野さんが生まれたての状態で捨てられた子猫を保護し、ミルクボランティアから育て上げた猫や多頭飼育崩壊から保護された猫など十数匹が穏やかに過ごす。

 長崎では昨年3月、動物の殺処分ゼロを政策の一つとして掲げる大石賢吾さんが県知事に就任し、2029年度にゼロを目指すロードマップを発表。7月には長崎市で動物愛護条例が施行され、動物愛護に対する変化の兆しがある。一方で山野さんは「条例や動物愛護に対する理解がまだ十分に行き渡っていない」と現状を話す。

 動物愛護センターやシェルターでも受け入れる頭数に限界があることから、「真っ先に殺処分の対象となるのは生まれたばかりの子猫。目の前で飢えている猫がいるからかわいそうという理由だけで餌をあげてしまうと繁殖を繰り返し、不幸な命を増やすことにつながる。餌を与えないことが大切なのではなく、不妊化などと併せて地域猫として見守るなど、猫と人が地域で共生していくことが大切」と話す。

 「本来は外に猫がいないことが一番いい状態」という理念の下、活動を続けてきた山野さん。地域猫活動を行ってきた魚の町では猫の数が減ってきていることや高齢化が進んでいることから、同施設で順次保護することで活動終了を予定。同会では昨年だけでも40匹ほどを里親に譲渡していることから、山野さんは「シェルターを通じて保護した猫を、愛情を持って飼ってもらえる里親へつなぐ架け橋として、人の元で幸せに過ごせる猫を増やしていきたい」と笑顔を見せる。

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