長崎の吟遊詩人が世界最古のラブソングを作詞か-遺跡で発掘された紀元前の曲に

演奏に耳を傾ける聴衆ら

演奏に耳を傾ける聴衆ら

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 長崎県島原市在住の吟遊詩人「Rue(ルー)」さんが9月20日、長崎市内で行われたイベントで世界最古と言われている曲にオリジナルで作詞した歌を披露した。

鈴が付いた紐を手に持つ参加者ら

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 その日限りの復活イベントが開かれた「本村貸本店」(長崎市日の出町)で披露されたもの。2012年に94歳で亡くなった元経営者・本村満子さんの孫に当たる本村公一さんが日本に帰国したタイミングで開いた。同店は満子さんが病床に伏した2010年から休業したまま。公一さんはラオスの日系企業に勤務しているため、満子さんの息子夫婦で公一さんの両親に当たる本村秀規さんと佐知子さんが風通しなどのメンテナンスを定期的に行っている。

 知人で長崎交響楽団のチェロ奏者・片田尚孝さんとともに、子どもを含む15人ほどの聴衆を前にミニコンサートを開いたRueさん。開演のあいさつをした後、「以前、シリアに2年ほど滞在したことがある。少し前に知人からシリアのウガリット遺跡で世界最古の楽譜が発見されていたことを教えてもらって感動した。その時のインスピレーションから歌詞が浮かんだ」といきさつを披露した。「およそ3400年前の曲とは思えないほど優しいメロディー。ぜひ愛の歌であってほしいと願い、世界最古のラブソングに仕上げた」とほほ笑む。

 同遺跡では1950年代に紀元前14世紀ごろのものと思われる石板が発見され、その中に楔(くさび)形文字を使った楽譜のようなものが書かれていた。楽譜は1972(昭和47)年にようやく解読作業を終え、通常使われている楽譜に書き直されたという。Rueさんは小さなハープを胸元に抱え、世界最古のメロディーを澄んだ音色で爪弾きながら、軽やかな声で厳(おごそ)かに歌い始めた。

 「何千年も時を超え、あなたに届けるラブレター。変わらぬ愛を誓った証、あなたに届けるラブレター」

 ある人は目を閉じ、ある人はかすかに体を揺らし、小さな子どもは母親の膝で甘えながら、世界最古のラブソングを鑑賞する聴衆は、小さな店内でお互いに身を寄せ合いながら静かに歌声に耳を傾けた。

 「何千年も待ち続け、あなたに会うため残された。これが私の心です」。ハープの弦が完全に鳴り止むのを確かめると、静かだった聴衆は堰(せき)を切ったように大きな拍手を贈った。

 「本当は明日行われるライブで初披露する予定だった」と苦笑いするRueさんは同曲を披露した後、片田さんのチェロとの掛け合いで数曲を即興で演奏。片田さんはチェロの独奏で長崎のご当地ソング「でんでらりゅう」をコミカルに演奏した後、亡くなった満子さんのために春日八郎さんが歌った「長崎の女(ひと)」や千昌夫さんの「星影のワルツ」も奏でた。

 Rueさんはハープ以外にアコーディオンでも演奏。チェロとのリズミカルな合奏に会場からは自然に手拍子が起こった。最後はバッグから長いヒモに鈴を付けた手製の楽器を取り出したRueさん。それを聴衆が全員で手に持ち、アコーディオンと鈴が一体となってポルカ「みんなで踊ろう」を合奏しながら会場を大きく盛り上げてミニコンサートを締めくくった。

 Rueさんは9月21日20時から「ワインバー田舎」(船大工町)で開かれる「秋の音楽祭」でも世界最古のラブソングを披露する予定。

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