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軍艦島ガイドがエッセー集を刊行-ほかにも関連本2冊

「軍艦島・廃墟からのメッセージ」と「軍艦島・離島40年」

「軍艦島・廃墟からのメッセージ」と「軍艦島・離島40年」

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 NPO法人「軍艦島を世界遺産にする会」理事長で九州伝承遺産ネットワーク会長の坂本道徳さん(60)が7月24日、元島民として自身の記憶と思いをつづったエッセー集「軍艦島 廃墟からのメッセージ」を刊行した。

写真集「未来世紀 軍艦島」

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 坂本さんは1954(昭和29)年、福岡県生まれ。1966年、小学校6年生の時に端島(軍艦島)に移住。1999(平成11)年、25年ぶりに同窓会で端島を訪れた坂本さん。「故郷」が無人島になった後、荒廃した姿を前にして「ここを保存せねば」と決意する。2003年、坂本さんは仕事を辞めて「軍艦島を世界遺産にする会」を設立。軍艦島のガイドをしながら軍艦島に関する資料の編纂や聞き取り調査活動、ガイドの養成をはじめ、全国で講演活動などを展開。10年以上の年月をかけ、さまざまな人的ネットワークを築き上げた結果、「明治日本の産業革命遺産」の一つとして2015年の世界遺産登録見込みを獲得した。

 坂本さんは5月にも「軍艦島 離島40年 人びとの記憶とこれから」を上梓。2009年に島への上陸が解禁されて以降、限られた場所しか立ち入れないにもかかわらず、のべ50万人以上が訪れる無人島が「廃墟の島」と認識されて観光上陸されることに対して「果たしてそれでいいのか?」と投げかける。「日本の歴史の中で『端島』が『軍艦島』に変貌した経緯にきちんと目を向けなければ、世界遺産登録されたとしても単なる物見遊山になってしまう」と坂本さん。

 これまで軍艦島は写真で語られることが多かったが、この2冊は坂本さんの実体験による生の記録。通常はあまり語られない「閉山後に離島した人たちが軍艦島をどのように見ていたか?」という視点についても書かれている。

 「離島40年」は全5章で構成。第1章から第3章までは主に昭和40年代の島の生活について紹介。離島した人たちの生の声も収められている。第4章・第5章は世界遺産登録への取り組みと、その後の経緯についての記録。可能な限り、リアルな軍艦島の姿を浮き彫りにする。

 「廃墟からのメッセージ」は同書とは少し異なり、元島民としての自身の記憶と思いをつづるエッセー集。見開き完結で85枚の写真と記憶をたどる「物語」が収められている。目次には「肥前端島灯台」「人道トンネル」「夢の跡」「炭鉱労働者の島」「65号棟の眺望」「地獄段」「名物、渡り廊下」「崖っぷちの守り神」「幼稚園のオルガン」「残された仏壇」などのタイトルが並ぶ。

 坂本さんの友人で写真家・秘境探検家の酒井透さんも写真集「未来世紀 軍艦島」を今年5月に出版した。酒井さんは1960(昭和35)年、東京都生まれ。小学校高学年から趣味で鉄道写真を撮り始め、大学卒業後にフリーカメラマンとして国内外を取材。1985年からは写真週刊誌の専属カメラマンを5年間務めた。酒井さんは「1974(昭和49)年、軍艦島閉山のニュースを聞いた時、蒸気機関車の撮影を趣味にしていた中学2年生の私は『石炭』というキーワードで繋がる軍艦島に一度で引き込まれた。今回、炭鉱の記憶を撮影するために軍艦島を歩いたが、予想以上に多くの時間を費やすことになった。記録しておかなければならないものが、あまりにも多く残されていたからだ」と振り返る。酒井さんは関連資料を集め、昨年9月から長崎市の特別許可を取り、通常では立ち入りができない区域を5回にわたって撮影した。

 坂本さんは「端島の生活の記憶を持つ人たちは、あと数十年で途絶えるだろう。かつては廃墟だった場所が今や年間17万人が訪れる観光地になっている。果たしてこの島は次にどんな革命の渦に巻き込まるのか。人の記憶が消えても、記録を後世に伝えるために出版した。酒井さんの写真集とも合わせ、これらの3冊をぜひ一読していただければ」と呼び掛ける。

 「軍艦島 廃墟からのメッセージ」(亜紀書房)は四六判、208ページ。価格は1,728円。「軍艦島 離島40年 人びとの記憶とこれから」(実業之日本社)は単行本サイズ、247ページ。1,944円。「未来世紀 軍艦島」(ミリオン出版)はA4判、160ページ。3,780円。

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